2012年8月15日水曜日

Eve of Destruction.


チェルノブイリ原発事故以降、プロテストソングを積極的にカバーし続けた忌野清志郎率いるRCサクセション。♪でもよぉ〜何度でも何度でも俺らに言ってくれよ、世界が破滅するなんて嘘だろう♪が耳に残っています。元歌は、1965年、全米ナンバーワンヒットを記録したプロテスト・フォークロックの代表作。公民権運動、冷戦、ベトナム、核軍拡競争...。ボタン1つで世界が破滅するかもしれないという不安と恐怖が、日々現実に迫り来ていた時代。それが、“過去”であったいうのはまやかしで、実は今も隣合せなのだと実感させられる日本です。

【曲紹介】
◯作詞/作曲は、 P. F. Sloan、歌唱:Barry McGuire(ニュー・クリスティ・ミンストレルズNew Christy Minstrelsの一員)。リリースは1965年。スローンは本名のフィル・スローンで通していたが、渾名がフリップで、フィリップ・フリップ・スローンを縮め、芸名としてP.F.スローンを名乗るようになった。

◯シングルの大ヒットを受けて、マグワイアのソロ・デビューアルバム『Eve of Destruction』も制作された。ボブ・ディランBob Dylan の 『Masters of War 戦争の親玉』他を収録。プロデューサーは、ルー・アドラーLou Adler、スローン、そしてスローンとコンビを組んでいたスティーヴ・バリSteve Barri。アドラー自身が経営していたダンヒル・レコードからリリース。

◯フーテナニー(※)の眼から見た、核戦争後の恐怖を描いた歌との事だったが、であるが、当時は内容が強烈であるという理由で放送禁止になったとか。だが、その事で、返って民衆の関心を引き、No.1を獲得したという。多くのアーティストが、カバーしている。

◯日本では、まず高石友也がカバー。 『フォーク・アルバム第3集「坊や大きくならないで」』(1969年)に「明日なき世界」として収録。 ちなみに、同アルバムの収録曲は、
「坊や大きくならないで 」「 お捨てメリンダ 」「竹田の子守唄 」「 ハッシュ・リトル・ベビィ」「  血まみれの鳩 」『 明日なき世界 』「 ランブリン・ボーイ 」「 北の国へ」 「 労務者とは云え」「  おいで僕のベッドに」「 ときは流れる 」「 青年は荒野をめざす」「 もしも平和になったなら」

◯1990年、RC サクセションがカバー。忌野清志郎が、高石ともや訳を尊重しつつ、自身の声やバンドに合わせて訳。アルバム『カバーズ』に収録。

◯スローン&バリの曲は、ママス&パパスの「You Baby」、フィフス・ディメンションの「Another Day, Another Heartache」、タートルズの「Let Me Be」、ジョニー・リヴァースの「Secret Agent Man」他。グラス・ルーツという名義で、「Where Were You When I Needed You」。


【歌詞】
The eastern world it is explodin',
violence flarin', bullets loadin',
you're old enough to kill but not for votin',
you don't believe in war, what's that gun you're totin',
and even the Jordan river has bodies floatin',
but you tell me over and over and over again my friend,
ah, you don't believe we're on the eve of destruction.
東方の世界では爆発的に増えている
燃え上がる暴力、装てんされる弾丸
君たちの歳なら殺しはもうできる、投票はまだだけどな
君らは戦争信者ではないだろうが
かかえた銃で何かができると信じている
ヨルダン川にさえ死体が浮くご時勢だ
そして君らは僕に
繰り返し繰り返し言うんだ
世界が明日滅びるかもしれない、なんて
信じないと

Don't you understand, what I'm trying to say?
Can't you see the fear that I'm feeling today?
If the button is pushed, there's no running away,
There'll be noone to save with the world in a grave,
take a look around you, boy, it's bound to scare you, boy,
but you tell me over and over and over again my friend,
ah, you don't believe we're on the eve of destruction.
僕の言いたいことが理解できないのかい?
僕が今日いま恐怖を感じているのがわからないのかい?
ボタンが押されたら最後、逃げ場なんてないんだ
全世界が墓になっちゃって、助ける人すらいなくなるんだ
自分の周りをちゃんと見てみなよ、ぞっとするぜ
それでも君たちは僕に
繰り返し繰り返し言うんだ
世界が明日滅びるかも知れないなんて、
信じないと

Yeah, my blood's so mad, feels like coagulatin',
I'm sittin' here, just contemplatin',
I can't twist the truth, it knows no regulation,
handful of Senators don't pass legislation,
and marches alone can't bring integration,
when human respect is disintegratin',
this whole crazy world is just too frustratin',
and you tell me over and over and over again my friend,
ah, you don't believe we're on the eve of destruction.
僕の血は怒りで沸騰して固まっってしまったみたいさ
僕はここに座ってただ見ているだけなんだ
真実をねじまげて言うなんてできないよ、
もう規則すらないんだ
一握りの上院議員たちのせいで法案は通らない
デモ行進しただけじゃ世界統一なんかできない
人権の尊重なんて崩壊してる
この狂った世界にはイライラするばかりさ
それでも君たちは僕に
繰り返し繰り返し言うんだ
世界が明日滅びるかも知れないなんて、
信じないと

Think of all the hate there is in Red China!
Tehn take a look around to Selma, Alabama!
Ah, you may leave here, for four days in space,
but when your eturn, it's the same old place,
the poundin' of the drums, th pride and disgrace,
you can bury your dead, but don't leave a trace,
hate your next-door-neighbour, but don't forget to say grace,
and you tell me over and over and over and over again my friend,
ah, you don't believe we're on the eve of destruction.
憎しみの生んだものをすべて思い出してみなよ、
赤い旗の中国とかさ
そしてアラバマ州セルマ(*)で何が起きているか見て回るといい
そうだな、4日くらい宇宙に逃げるって手もあるな
でも、前とまったく同じ場所に戻ってくるしかない
戦いのドラムが響き、高慢と恥辱を教え込む
殺した死体は埋めてもいいが、痕跡を残すなよ
隣人を憎悪しろ、でも、神に祈るのは忘れるな
それでも君たちは僕に
繰り返し繰り返し言うんだ
世界が明日滅びるかも知れないなんて、
信じないと

※フーテナニー(hootenanney)
休みの日になると若者たちが集まってきて、
「こんな歌を作ってみたんだけど」と一人が歌いだす。
それが終わると
「じゃこの歌、知ってる?」と、別の誰かがギターを弾く。
ある者は伴奏に加わり、ある者はコーラスをつける。
そんな調子で曲や歌詞が練られ、完成していく
そんな歌の集団製作の現場をフーテナニーと称した。

※アラバマ州セルマでは、黒人公民権を求め行進する市民を、警官隊が襲うという事件が起きていた。



【高石友也・忌野清志郎による日本語詞
東の空が燃えてるぜ
大砲の弾が破裂してるぜ
おまえは殺しの出来る年齢
でも選挙権もまだ持たされちゃいねえ
鉄砲かついで得意になって
これじゃ世界中が死人の山さ

でもよぉー何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅するなんて嘘だろ、
嘘だろ

感じねえかよ、このいやな感じを
一度ぐらいはテレビで見ただろ
ボタンが押されりゃそれで終わりさ
逃げ出す暇もありゃしねえ
見ろよそこの若いの、よく見てみろよ
びくびくするのも当たり前さ

でもよぉー何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅するなんて嘘だろ、
嘘だろ

奴らは俺がおかしいと言う
でも本当のことは曲げられやしねえ
政治家はいつもゴマカシばかり
法律で真実は隠せやしねえ
そりゃデモをするだけで平和がくるなんて
甘い夢など見ちゃいねえさ

でもよぉー何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅するなんて嘘だろ、
嘘だろ

狂ってきたこの世は騒がしいぜ
こんなとこからは逃げるに限る
一週間ほど宇宙旅行に
でも戻ってくる場所は元の故郷
進軍ラッパが闇の中に響く
潜水艦が、ジェット機が、国を取り巻く

でもよぉー何度でも何度でも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅するなんて嘘だろ、
嘘だろ



2012年8月8日水曜日

Puff, The Masic Dragon


かつて大ヒットしたアメリカのフォークソングが、日本の小学校の教科書に取りあげられていたとは露知らず。最近、由紀さおりさんのアルバムで知り得、頻繁に聴くようになりました。ベトナム戦争時代に歌われたため、麻薬撲滅や反戦の隠喩があるのではと取り沙汰されたとか。ステージ上からは‘子どもの成長に関する歌’と一貫したアピールがされ続けたそうですが、動画後半にあるように、会場全体で唱和する様子に、世代を超えて歌い継がれてきたことが伺えます。「どんなに愉しくても別れを告げる時がくる」友達と別れ、独り魔法の世界にいるドラゴンを想うと、切なく響くメロディです。

【曲紹介】
◯作詞:レオナルド・リプトン Leonard Lipton、作曲:ピーター・ヤロウ Peter Yarrow

◯ピーター・ポール&マリーのメンバー、ピーター・ヤロウの学友だったレオナルド(1959年当時19歳)がオグデン・ナッシュ (Ogden Nash) の詩 『Custard the Dragon』の一節 "Really-O, Truly-O, little pet dragon." に触発されて物語を作り、それを聴いた学友のピーターが、詩のような物語に歌詞を加えたりして作曲したと伝えられている。

◯1961年からピーター・ポール&マリー(Peter Yarrow、Noel Paul Stookey、Mary Travers)の曲として演奏されるようになり、1963年にレコーディングされ、大ヒットした。

◯Puffという名前は、龍の鳴き声に由来しているとか。

◯"Puff the Magic Dragon" は、ベトナム戦争においてAC-47/AC-130攻撃機を指す米軍のスラングにもなったという。ヒッピーの聖歌との噂が流れ、ドラッグ・ソングと曲解され、マリファナ所持に極刑を科すシンガポールでは放送禁止にまでなったというから、若者への浸透度が凄まじかったと想定される。

◯1985年10月9日にナッシュピルで行なわれた25周年コンサートで、ピーター自らが「歌詞の解釈に誤解があるようだが、他意はない。子どもの成長の歌だ」とコメントしている。

◯アメリカでは、1978年から、この曲を題材にとったアニメシリーズが放映されていたらしい。パフの声はバージェス・メレディス Burgess Meredith。

◯日本では、小学校の音楽教科書に掲載され、また幼児向け番組で動画が放映されたりしたため、馴染みのある人も多い。1990年代中頃には、CMでも起用された。

◯由紀さおりがピンク・マルティーニと共演して話題となったアルバム『1969』に、一部日本語詞・一部英語詞で歌う同曲が収録されている。

【歌詞】
Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honalee.
Little Jackie Paper loved that rascal Puff
And brought him strings and sealing wax and other fancy stuff, oh
魔法の龍 名前はパフ
海の近くに暮らしてた
遊び場はホナリーって所
秋の霧が立ちこめてた
少年の名はジャッキー・ペーパー
いたずらばかりのパフが大好き
ヒモやら、ロウやら、おもちゃやら
何かを持ってきては
いつもパフに会いにやって来た

Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honalee.
Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honalee.
パフは魔法の龍
海のそばに住んでいた
秋の霧が立ちこめる
ホナリーってところで遊んでいた

Together they would travel on boat with billowed sail
Jackie kept a lookout perched on Puff's gigantic tail
Noble kings and princes would bow whene'er they came
Pirate ships would lower their flags when Puff roared out his name, oh
パフとジャッキーはいっしょに旅に出た
帆をいっぱいに張った船に乗って
ジャッキーは見張り番さ
パフの大きな尻尾にちょこんと座って
どこへ行っても歓迎された
王様と王子様だって会えばうやうやしく挨拶したものさ
パフが大きな声で吠えるように名前を告げれば
海賊船だって白旗を上げたんだ

Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honalee.
Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honalee.
パフという名の魔法の龍
海のそばに住んでてね
秋の霧が立ちこめる
ホナリーと呼ばれるところで遊んでいるよ

A dragon lives forever, but not so little boys
Painted wings and giants's rings make way for other toys.
One grey night it happened, Jackie Paper came no more
And Puff that mighty dragon, he ceased his fearless roar
龍の命は永遠だけど
少年は子どものままではいられない
色づけした羽根や大きな輪っかは
別のおもちゃに変わっていく
ついにその時がやってきた
暗くなるまで待ったけど
ジャッキーはとうとうパフのところに来なかった
勇ましかったパフだけど
それから大声をあげなくなった

His head was bent in sorrow, green scales fell like rain
Puff no longer went to play along the cherry lane.
Without his lifelong friend, Puff could not be brave
So, Puff that mighty dragon sadly slipped into his cave, oh
パフは悲しみでうなだれて
緑の鱗を流して泣いた
大好きだった桜の道にも行かなくなった
大切な友達がいなくなったんだもの
もう勇気も奮い起こせない
パフは強い龍
だけど悲しそうにほこらに帰っていった

Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honalee.
Puff, the magic dragon, lived by the sea
And frolicked in the autumn mist in a land called Honalee.
パフという魔法の龍がいるんだよ
海のそばに住んでいるのさ
ホナリーというところ
愉しそうに遊んでいるよ
秋に霧がたなびくところ


※絵本の「魔法のドラゴン パフ」では、歌詞のその後も描いていて、最後は小さな女の子がパフの元を訪れるとか。喜ぶパフ、そして大人になったジャッキーが陰からその様子を見ているのだそうです。